個人事業を法人化することにより出来る節税

個人事業を始めて数年経つと、法人化を考える方が多いです。そこで、個人事業の法人化(一般的にこれを「法人成り」と言います)により可能となる節税について、いくつかまとめてみました。
1.出張旅費規程を作成することにより、社長に日当を支払うことができる。
個人事業主でも、赤の他人である従業員に対してなら、出張旅費規程に基づいて出張手当を支払えば、経費として認められます。しかし、個人事業主は事業主本人やその家族に対しては、出張手当を経費として計上することができません。これに対し、法人化をすれば、事業主(つまり社長)や従業員である家族に出張手当を支払えば、経費として認められるのです。
そのため、出張の多い会社であれば、出張旅費規程を作成し、出張手当を支給することにより、節税が可能となります。
ただし、出張手当は同業他社等と比較して不当に高額になると認められませんので、相場の金額の範囲内で支給する必要があります。もちろん、出張したなら従業員にも支給してください。役員だけに支給はダメです。
2.生命保険料を経費にすることができる。
個人事業主であれば、税金面でのメリットは生命保険料控除(最大12万円)だけですが、法人契約にすると、支払った保険料の全額または一部が経費として認められます。
その保険の種類や契約によって、経費として認められる金額が変わってきます。
3.欠損金の繰越控除
欠損金の繰越期間が9年間になります。
例えば、
1期目赤字 △150万円
2期目黒字 100万円
となった場合、2期目の決算申告では、100万円ー100万円(1期目赤字150万円のうちの100万円)=0となります。
そして、1期目の赤字で黒字から控除できなかった50万円は3期目以降に繰り越されます。
その繰り越せる年数が赤字が生じた年の翌年から9年間となるわけです。
一方、個人事業の場合は欠損金の繰越期間は3年間です。
多額の赤字が出た場合は、3年間では取り返せない可能性がありますが、9年間だとその危険性は少なくなりますね。
※平成27年度の改正により、平成29年4月1日以後に開始する事業年度については、欠損金額の繰越期間は10年になります。
5.消費税を最大2年間支払わなくてよい。
個人事業主時代に消費税を納税していても、資本金が1,000万円未満の会社を設立すれば、最大で2年間は消費税の納税義務を免れることができます。
ちなみに、消費税の納税義務者は次のいずれかに該当する事業者です。
a.2年前(法人は前々事業年度)の売上高が1000万円を超えている
b.前年1-6月(法人は前期の上半期)の売上高又は給与のいずれかが1000万円を超えている
最初の事業年度の期間と上記bの関係で、「最大で2年間」となります。
6.決算月を自分で決めることができる。
個人事業主の決算月は12月です。個人の場合は1-12月の期間で全ての収入に対して所得(もうけ)がいくらだったかを計算します。
一方、法人の場合は、会社を設立する際に決算月をいつにするかを自分で決めることができるのです(会社設立後に決算月を変更することも可能)。
自分で決算月を決めることのメリットとしては、閑散期を選ぶことができる点です。
一番売上が上がる月を決算月にしてしまうと、節税をする時間が無くなってしまいます。
事業年度の初めの方に売上が多い月を持ってきておくと、税金対策を講じることができます。
7.自宅を会社名義で賃貸借契約することにより、自宅の家賃の一部を経費に出来る。
個人事業主の場合は、自宅以外に事務所や店舗を借りていると、自宅の家賃を経費にすることはできません。
しかし、会社の場合は、社宅として会社が賃貸借契約を結ぶことにより、会社が家賃を支払い、社長が会社へ家賃の一部を支払うことにより、その差額を経費にすることができます。
社長が会社へ支払う家賃は計算式により最低負担額が決まってきますが、家賃の50%を支払っていれば、普通の住宅の場合は問題ないでしょう。
まとめ
実際の節税を実行する際には必ず専門家へご相談くださいね。
なお、法人成りは節税目的のみで行うものではありません。
法人成りする際には節税以外のメリット・デメリットも十分にご検討ください。