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節税と退職金の準備に使える小規模企業共済制度とは?~基本編~

2018/11/10
 
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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

小規模企業共済とは、法律に基づき国が運営する個人事業主や法人の経営者向けの退職金制度です。
その名の通り、小規模な事業者を対象としているため、加入するには要件があります。
(詳しくは中小機構HPのこちらをご覧ください)

小規模企業共済は個人事業主の方が節税対策で加入されることが多く見受けられますが、小規模企業者に該当すれば法人の役員でも加入が可能です。

メリットとデメリットについて、確認してみましょう。

 

メリット

 

1.掛け金の全額が所得控除の対象となる。

掛け金は月額1,000~70,000円の間で500円刻みに設定でき、自分で自由に決めることができ、その全額が所得税の所得控除の対象となります。例えば、月額10,000円の場合、年間120,000円の所得控除が受けられるため、120,000円×税率=節税額です(もし税率が20%なら、この場合の節税額は24,000円です)。
節税額の一例は中小機構HPのこちらに記載があります。

 

2.廃業などで共済金を受け取る際には「退職所得」又は「公的年金等の雑所得」となる。

「一括受取り」、「分割受取り」および「一括受取りと分割受取りの併用」の3種類があり、一括受取りの場合は退職所得、分割受取りの場合は公的年金等の雑所得となります。
退職所得も公的年金等の雑所得も、受取額から一定額を控除した金額を基にして税金が掛かるので、支払時のみならず受取時も節税が可能です。

 

3.付加共済金があるため、廃業時等には掛けた金額以上を受け取ることができる。

共済金の内訳は、基本共済金と付加共済金に分かれています。
基本共済金は、掛け金と掛けた月数に応じて法令に基づき算定されます。
付加共済金は、運用収入等に応じて予定利率が定められ、算定されます。
計算は複雑でその受取時によってもらえる金額が変わりますが、基本的に1年以上掛け金を支払えば、元本割れはしませんし、廃業による共済金請求で、かつ、3年以上掛け金を支払っていれば、掛けた期間に応じてプラスがあるようです。
共済金請求事由によって、3年以上掛け金を支払っていても、掛け金に+αがない場合もあります。

 

4.契約者貸付制度があります。

掛け金の範囲内で、無担保・無保証人で事業資金を借りることができます。

 

デメリット

 

1.加入期間20年未満で解約すると元本割れする。

掛金納付月数が20年(240か月)未満の場合は、解約手当金は掛金合計額を下回ります。
短期間で解約してしまうと、解約手当金は掛金合計額の8割になってしまいます。
(あくまで解約です。廃業等の理由での脱退は解約ではなく共済金の請求なので、上記に該当しません。)

 

2.加入期間が1年未満で解約すると掛け捨てになる。

掛け金納付月数が12か月未満で解約すると、1円も戻ってきません。

 

ポイント

この制度はあくまで事業主の退職金を準備するための制度です。
そのため、20年未満の途中解約は元本割れするという制約が設けられている上、解約手当金の受取時は一時所得となり、受取時の節税も期待できません。
しかし、廃業等による脱退については、掛け金を支払った期間が1年(脱退理由によっては6か月)以上であれば、元本割れはしません。
加入する場合は、毎月または毎年一定額を支払うことになりますので、資金繰りとのバランスも考え、無理なく確実に支払える金額を設定してください。

また、小規模企業共済に限らず、生命保険による退職金の準備方法もあるため、自分自身にあったものを選びましょう。

※平成27年8月現在の情報に基づいて記載しました。

※平成28年4月1日以降は、掛金減額の要件であった「事業経営が著しく悪化している」等の理由が撤廃されました。以前は減額に当たっては委託期間である金融機関や商工会等で「確認印」が必要でしたが、それも不要となりました。以前よりは減額しやすくなっています(手続きフロー)。但し、減額した場合、その減額部分についてはその後運用されないというデメリットはあります。

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