法人成りしたとき、個人事業で使っていた資産はどうなる?

個人事業を法人化した場合、今まで使っていた車や機械などの事業用資産をそのまま使用する方がほとんどでしょう。
もちろんそれでいいのですが、個人事業を法人化したということは、誰か別の人に事業を手渡したと同じことなのです。
もし自分の事業を赤の他人に手渡すとしたら、消耗品など安いものはタダであげても、車や機械など購入するのに高価なものは売る又は貸すのではないでしょうか?
法人成りも同様なのです。
事業用資産の移転方法は次のパターンがあります。それぞれの場合に個人に課せられる税金も記載しました。
事業用資産の移転方法
1.売却 → 譲渡所得・・・売却代金-簿価=利益 この利益に課税されます。
2.贈与 → 譲渡所得・・・個人が法人へ価値あるものを時価の1/2に満たない金額で譲渡すると、時価による譲渡があったと見なされます。計算式は、時価-簿価=利益となります。この利益に課税されます。
3.有料で貸す(リース) → 有料で貸す場合には、そのリース料が個人としての売上となり、確定申告の必要があります。
4.無料で貸す → 無料で貸しても構いません。例えば、車を無償で貸した場合、ガソリン代など法人の事業において車を使うことで発生する費用は法人側で経費に出来ます。法人側で減価償却はできません。
具体的には?
1の売却代金は時価で行います。
ただ、土地や建物は別として、中古の資産は時価を見積もるのが困難なものが多いため、簿価を時価とすることがあります。
簿価とは、取得価額から減価償却累計額を差し引いたものです。
個人事業の申告の際に適正に減価償却を行ってきたのであれば、個人事業を廃止した年分の決算書の未償却残高が簿価となります。
簿価を時価とすると、結局、売却代金(簿価)-簿価=ゼロとなり、利益は発生しないため譲渡所得に課税されることはありません。
ただし、その個人が消費税の課税事業者である場合は、売却代金は消費税の課税売上になります。
売却ですので法人は個人へ代金を支払います。
2の場合も簿価を時価とすると、利益はゼロとなります。1の売却と異なるのは、法人側で受贈益が発生する点です。
消費税についても1と同様です。
3の場合は前述の通り、確定申告が必要ですが、資産の維持費などの経費と同等のリース料に設定し、利益をゼロにすることが可能です。
また、3と4の場合は契約書を作成しておきましょう。
まとめ
どのようにするのが良いかはケースバイケースです。
しかし、1の売却を選ぶことが多いでしょう。
なぜなら、2の贈与は法人に利益が計上されますし、3の有償リースは確定申告が必要なため、手間が掛かります。
4の無償リースは未償却残高が多い場合、減価償却費を事業経費に落とせないことになり、勿体無いですね。
とはいえ、敢えて売却以外の方法を取る方が良いこともありますので、しっかり検討しましょう。