大阪で開業する女性税理士です。

複数の事業をしている場合の法人成り

2016/07/28
 
この記事を書いている人 - WRITER -
税理士 辰田美香
上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

個人事業で複数の事業を行っている場合に会社を設立することにしたとします。

この場合、個人事業で行っていたすべての事業を法人成り(法人化)する必要があるのでしょうか?

基本的にはすべての事業を法人化してもよいですし、一部だけを法人化しても構いません。
例えば、会社組織で飲食店を経営する傍ら、個人事業で学習塾を経営することが可能です。
また、飲食店も学習塾も同じ会社で経営することもできます。

要は、先の問いに対しては、「どちらでも可能」が答えです。
但し、注意点やメリット・デメリットがあります。

 

一部の事業だけを法人化する場合の注意点

 
1.事業の境界線
複数の事業のうち一部だけを法人化する場合、それぞれの事業の境界をはっきりさせておく必要があります。
銀行口座をしっかり分けることは当たり前ですが、法人で使用している資産を個人で使用しないこと、また、経理面も個人事業で複数の事業を行っていた時よりしっかり分けて管理しなければいけません。

基本的に税務署サイドでは、複数の事業を単体ではなく複数の人格で事業を行う(法人と個人又は法人を複数持って事業を行う)とその複数間で何か利益操作をしているのではないか?、という目で見がちです。

痛くもない腹を探られることのないように、しっかり区分する必要があります。

2.事業の類似性
会社法では「競業避止義務」というものがあります(会社法第356条「競業及び利益相反取引の制限」)。
これは、原則的に法人の取締役は自社の事業と競合する取引や自社に不利益をもたらす可能性がある取引を行ってはならないとしています。
会社を経営する取締役が、会社で得た機密情報を基にその地位を利用して、個人的に自分に有利な取引を行うようなことがあると困るため、このような法律があります。
そして、このような競業行為に当たる取引をする際は株主総会(又は取締役会)の承認が必要であると定められています。

しかし、中小企業に多い、取締役=株主という会社では、競業避止義務についてはそれほど神経質になる必要はないでしょう。
会社が不利益を被って困るのは、出資をしている株主だからです。

中小企業の場合、1でも書きましたが、事業が類似していて問題にするのは税務署です。
事業が類似していると、どうしても個人と法人の区分が曖昧になりがちです。
しっかりと区分が付けられない場合は、法人に全ての事業を移した方が無難と言えます。

 

メリット・デメリット

 
1.メリット
売上の金額によっては、消費税の節税が出来ることです。
消費税は基本的に2年前の課税売上が1000万円以下であれば消費税の納税義務がありません(例外あり)。
また、消費税の計算方法は原則課税と簡易課税の2種類がありますが、課税売上が5000万円以下でなければ簡易課税を選択することができません。事業次第では原則課税より簡易課税が有利になることがありますが、課税売上が5000万円を超えているとその選択ができません。

事業を分けることによって、上記のラインをクリアすることができるならば、メリットが出ると言えるでしょう。

所得税については、メリットが出るケースは限定的でメリットが出ないケースが多いため、説明を省きます。

2.デメリット
事業のうち一部分だけを法人化すると、経理や事務等の管理面で手間と経費が増えます。
経理はもちろん別に行い、法人の確定申告はもちろん個人の確定申告も必要です。
確定申告を税理士に依頼した場合、法人も個人も依頼すると、法人だけの場合に比べ手数料が高くなります。

 

まとめ

 
今回は複数の事業を行っている個人事業の方が一部分を個人事業に残すのか、すべての事業を法人に移すのか?について書きました。

私の個人的な感想ですが、一部分だけを法人化することはデメリットのほうが多い気がします。
メリットのほうが確実に大きい個人事業主さんは少ないのではないでしょうか。

また、会社を複数設立して、それぞれの事業を別の会社で経営するということもあります。

どうすべきか迷う場合は、専門家と相談しながら行う方が良いでしょう。

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税理士 辰田美香
上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

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