大阪で開業する女性税理士です。

消費税の課税事業者になったほうがよい場合とは?

2019/07/23
 
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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

 

事業を開始した場合、開業当初は消費税が最大2年間免除されます(免除されない場合もあります。詳しくはこちら)。

消費税が免税されて金銭的に助かりますね。しかし、あえて消費税の課税事業者になった方が良い場合があります。

それは、消費税の計算を行った結果、消費税が還付されるケースです。
消費税の最終的な負担者は消費者です。事業者は消費税を預かったり、立替払いしているだけなのです。
それでは、どういった場合に還付になるのか、解説していきましょう。

 

業種によって還付を受けられる場合

消費税の課税区分は、課税取引、輸出免税取引、非課税取引、不課税取引というものがあります。

このうち、総売上高のなかに、輸出免税取引の割合が高いと還付を受けられます。

輸出免税取引とは、その名の通り、日本国外へ商品を輸出等する取引をいいます。

消費税は日本で消費するから課税されるのであって、外国へ販売して外国で消費されるものには課税されません。

例えば、コンビニ店だと商品の売上は課税取引となり、商品を648円(うち消費税48円)で仕入れ、1080円(うち消費税80円)で売った場合、国に納める消費税は80円-48円=32円です。

しかし、輸出した場合は、商品を648円で仕入れて、1000円で売ることになります。
そうすると、消費税の計算は、0円-48円=△48円となり、還付が受けられるということです。

また、不課税取引の割合が多い場合も還付を受けられる場合があります(但し、課税取引が少しでもあることが前提です。)。

不課税取引とは、そもそも消費税の課税対象にはならない取引のことを言います(詳しくはこちらをどうぞ)。

例えば、国外で役務の提供(要は形のないサービスですね)をする場合で、国外で完結するような事業は不課税取引となります。
但し、国外と国内の両方で役務の提供をしている場合、国外と国内の区分が契約書等で明確に分かれていないとダメです。
国外と国内の区分においてその金額が契約書等で明確に分かれていない場合、役務の提供を行う者の事務所の所在地で国内取引なのか、国外取引なのかが判断されます。

FX取引の為替差益も不課税取引ですが、スワップは非課税取引ですし、為替差損になることも考えると、FX取引がメインの会社は課税事業者にならないほうがいいでしょうね。

あと、会費収入も不課税取引です。但し、対価性があると認められれば課税取引になります。
「対価性がある」とは要は見返りとして具体的に何かを得るということです。

 

多額の投資をしたり、赤字が発生した場合

多額の設備投資をしたり、開業したばかりで売上が上がらない等で赤字の場合は消費税の還付を受けられる可能性があります。

但し、赤字と言っても消費税の計算上、売上から控除できない経費(給料、保険料、租税公課などはそもそも消費税が掛かっていません)があるため、法人税や所得税が赤字でも消費税の還付を受けられない場合も多々あります。ここでいう赤字は、課税売上高から消費税が課税されている経費を控除してなお赤字になる場合を言います。

設備投資については、建物や機械などの資産を購入した場合、その資産を購入したときに消費税の計算をします。

例えば、売上1080万円、仕入や経費648万円、機械の購入額540万円とします。
この場合、消費税の計算は80万円-48万円-40万円=△8万円となり、還付が受けられます。

この場合の注意点は、課税事業者を選択している間に資産の取得価額が一つ当たり100万円以上のものを購入した場合は、その購入した年から3年間は免税事業者に戻れません。また、簡易課税も選択できません。

 

注意事項

課税事業者になるためには期限までに課税事業者選択届出書を提出する必要があります(参考:国税庁HP)。

この届出書を提出し、一度課税事業者になると、2年間は免税事業者に戻れません。
そのため、課税事業者を選択して1年目は還付を受けたけど、2年目は状況が変わり納付になるということも起こり得ます。

また、簡易課税を選択している事業者は還付を受けることができません。

課税事業者になるかどうかの判断はご自身で行うのではなく、専門家に相談することをお勧めします。

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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

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