スマホで写真を撮ってレシートや領収書を捨てるのはアリか?–中小企業のための電子帳簿保存法–

電子帳簿保存法では、まず、1.帳簿の保存 2.書類の保存 の2種類に分かれます。
帳簿とは総勘定元帳や仕訳帳などを指し、書類とは領収書や請求書などを指します。
会計ソフトで入力した帳簿を紙にプリントアウトせずに、電子帳簿で保存(会計ソフトに電子帳簿に対応した機能が付いてれば可能)するのは、「1.帳簿の保存」です。
「スマホで写真を撮ってレシートや領収書を保存」というのは、「2.書類の保存」の話です。
上記1と2は申請書も異なります。
平成28年度の税制改正では、これまでスキャナで領収書等をスキャンする必要があったのが、スマホで写真を撮ってもOKとなりました。つまり、「2.書類の保存」についての改正です。
とても便利になった感じがしますが、導入に当たっては気を付けなければいけない点があります。
スマホで撮影して保存するために知っておくこと
申請書の提出期限はいつ?
申請書の提出期限はその保存を開始する日の3か月前です。
スマホで領収書等を撮って保存することが認められるのは、平成29年1月1日以降です。
ですので、平成29年1月1日から導入する場合は、平成28年9月30日に提出することになります。
スマホ撮影して保存するだけではない
スマホで領収書やレシートの写真を撮って保存しておけば、それでOKというわけではありません。
以下の手順が必要です。
1.領収書やレシートに手書きで署名をする。
2.撮影後、所定の場所にアップロードし、3日以内にタイムスタンプを付す。
3.税理士が原本とデータをチェックする。
従業員数20人以下の小規模事業者の場合は、上記の手順となります。(小規模事業者については、国税庁Q&A問69参照)
しかし、小規模事業者に該当しない場合は、タイムスタンプ付与後に経理担当者等が内容を確認し、その後に上記「3」の手順となります(この場合は税理士ではない第三者でOKです)。
つまり、小規模事業者に該当する会社は税理士に依頼していれば、社長一人の会社でもこの制度が使えます。
小規模事業者に該当しない場合は、レシート等を受け取った人+内容を確認する人+チェックをする人の3名が必要です。
※タイムスタンプとは、「いつからこの書類が存在してますよ」+「内容は改ざんされていないよ」という2つを証明するための電子データです。
スマホ撮影してすぐに領収書をゴミ箱へポイできるわけではない。
上記にも記載した通り、税理士等の第三者が原本とデータをチェックする必要があるため、一定期間はその領収書やレシートを保管しておく必要があります。
第三者がきちんと原本とデータをチェックしたかどうかは税務署には分かりませんが、トラブル回避のためにも、やはりある程度の期間は原本を保存しておくほうが無難でしょう。
画像が不鮮明なのはNG
当たり前ですが、不鮮明な画像はNGです。
画像にも決まりがあり、解像度は「スキャニング時の解像度である25.4ミリメートル当たり200ドット以上」という要件があります。
えっ?なんのこと?
と思いましたね。
A4の大きさだと約388万画素以上です。
現在のスマホカメラだと問題ないでしょう。
また、14インチ以上のカラーディスプレイで4ポイント以上の文字を識別できる必要があります。
これ↓4ポイントで文字指定してみました。
4ポイントってだいぶ小さいよ。
中小企業が領収書やレシートを捨てるために必要なこと
領収書やレシートを写真でとるまではいいけど、タイムスタンプってどうすんのよ?って話です。
freee、弥生、MFクラウドなど会計ソフトの会社がタイムスタンプに対応すると発表しています。
タイムスタンプの料金として支払うのではなく、会計ソフト代金に含まれます。
freeeはプレミアムプラン(月額3,980円)であればタイムスタンプ対応、弥生は有料の安心サポートに加入するとタイムスタンプを使えるそうです。
タイムスタンプに対応した会計ソフトを使用すれば、今年の9月30日に申請することで来年早々から領収書やレシートを現物で保存する必要がなくなります。
ただし、領収書等の書類は、紙であれ、データであれ、原則として7年間保存することとされています。
ずっと、同じ会計ソフトを使い続けるなら問題は生じませんが、会計ソフトの移行に問題が生じる可能性があります。
まとめ
実際の運用がまだ始まっていないため、不確かな部分はありますが、いきなりこの制度に飛びつくのはやめたほうがいいでしょう。
まずは、紙でレシート等の保存はするけれど、スマホで写真を撮って経費精算する流れで運用してみて様子を見てください。
自分の会社で運用上の問題がないか、現在の会計ソフトを使っていて問題がないか、などをよく検討したうえで決めましょう。