会社を設立したけどやっぱり個人事業に戻したい?!ーよく考えたい個人成り

会社を設立して事業を始めたけど、社会保険料の負担は重いし、税理士報酬は高いし、赤字でも最低7万円の税金掛かるし、etc…個人事業主でよかったんじゃない?と思う方も居るかもしれません。
実際、会社で継続して一定の利益が出ていれば節税効果がありますが、利益もそれほど出ていないなら、会社である必要はないかもしれません。
個人成りをする際の手続きとメリット・デメリットについて、まとめました。
個人成りの手続き
方法はふたつ
個人成りする際に、会社を解散及び清算して完全に消滅させる方法と、会社を休眠させる方法があります。
会社を解散及び清算させる方法は解散や清算にあたって登記費用(41,000円)が必要になります。また、会社の機関設定次第では41,000円にプラスして登記費用が必要になる場合もあります。
会社を休眠させる方法は登記が必要ないため、費用が掛かりません。但し、会社は存在しているため、休眠中も税務申告が必要になります。
解散及び精算の手続き
1.まずは、会社としての事業を停止します。取引先等へ会社を解散する旨を告げ、解散の日以降は個人事業として活動する旨を伝えます。そして、解散の日以降は会社としての営業活動はゼロにします。
2.解散の日から2週間以内に解散の登記と清算人の登記をします。
3.解散の日から2か月以内に解散確定申告を行います。
4.会社が所有している財産の換金や債務の弁済を行い、残余財産の確定ができれば、2週間以内に清算結了の登記をします。会社の残余財産は株主に分配されます。
5.残余財産の確定日より1か月以内に清算確定申告を行います。
上記の解散や清算に伴って、税務署・都道府県・市町村への届出書も必要になります。
また、会社解散の日の翌日以降は個人事業として開業する旨の届け出等を税務署へする必要があります。
休眠の手続き
1.個人事業開業の日の前日までに会社としての営業を停止します。取引先等へも個人事業開業の日の前日までにその旨を通知します。そして、個人事業開業の日以降は会社としての営業活動をゼロにします。
2.会社に存在する固定資産で個人事業で使用するものについては会社から個人へ売却します。また、法人で契約していたもので、個人事業で使用するものは契約変更をします。公共料金などの名義変更や引落口座の変更なども必要になります。
3.税務署・都道府県・市町村に対して休眠の旨を記載した届出書を提出します。
上記に加えて、休眠の翌日から個人事業として開業する旨の届け出等を税務署へする必要があります。
なお、営業をしていなくても会社が存在するため、毎年、税務署へ税務申告書を提出しなくてはいけません。
都道府県や市町村に対して支払う均等割ですが、休眠中のため営業活動を行っておらず、物的設備等も有していない場合、休眠中の均等割は基本的に免除されると思われます。ただし、休眠中の均等割については、休眠する前に都道府県や市町村に確認をしてください。私が今まで携わった会社では休眠中の均等割は免除されてましたが、必ずしもそうではないという話を聞きます。一度会社を休眠し、その後事業を再開した場合は休眠中の均等割を遡って徴収されることもあるようです。
また、休眠中であっても役員変更登記が必要です。役員変更登記を怠たり最後の登記から12年経過した場合は、法務局の職権により解散されることがあります。
メリット・デメリット
メリット
・法人の場合に赤字でも課される法人住民税の均等割(最低7万円)が掛からない(個人住民税の均等割は数千円です)。
・個人事業税は、利益から290万円が控除される(法人事業税は控除がありません)。
・法人は社会保険が強制加入であるが、個人事業主の場合は、従業員が5人未満だったり、一定の業種は任意加入である。
・役員変更登記がない。
デメリット
・赤字の繰越が3年間しかできない。
・所得が高いと税率が高くなり、税負担が増える。
・事業主の給与が必要経費にならない。
・家族が他で働いてると、たとえ仕事を手伝ってくれていても給与を経費にできない。
・家族への給与は税務署への届出が必要(青色申告の場合)だったり、支給額に制限(白色申告)があったりする。
注意点
個人成りをしたくても、許認可の関係で問題が出たり、法人としか取引をしない顧客があると、個人成りはあきらめざるを得ません。
また、金融機関からの借入金がある場合は個人成りは難しいでしょう。返済するためには売上を挙げて利益を出さないと返済ができませんから。話し合いはできるかもしれませんが、簡単ではないと想像できます。
従業員がいる場合、社会保険を止めてしまうと不安になって退職する人が出るかもしれません。
上記に当てはまらない社長一人の会社は個人成りはしやすいでしょう。
そうでなければ、金銭的に個人成りをした方がよくてもそれだけでは図れない問題が多々あるため、個人成りをする場合は事前の計画が必要かもしれません。