持ち家住まいか?賃貸住まいか?で結果が変わるー小規模宅地等の特例が改正される方針

毎年12月に税制改正大綱が発表されます。
※税制改正大綱とは、まだ確定ではないけど税金の制度がこんな風に変わるよ、というものです。正式には来年の春に確定します。
それもあり、最近、来年度の税制改正で相続税の節税封じとなる改正が盛り込まれるとの新聞記事が掲載されていました。
内容は、小規模宅地等の特例についての改正です。
どんな制度で、どういう風に変わるのでしょうか。
小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算において、土地の評価額が80%減額される制度です。
評価額が小さいと、そこに係る相続税も少なくなるため、節税になります。例えば、土地の評価額が1億円の場合、評価額が1億円になるのか、80%減額された2千万円になるのか・・・税額に差がつくのが想像できますよね。
どんな土地が80%減額の対象になるかというと、
1.お亡くなりになった方が所有していた土地で
2.その土地の上にその人やその人と生計を一にする親族が経営していた会社(の建物)があったり、又は、その人やその人と生計を一にする親族が住んでいた自宅(の建物)があったりする
そういう土地です。
但し、面積に制限があって、上記の会社の建物が建っていた土地は400㎡、自宅の建物が建っていた土地は330㎡です。
上記に該当すれば、すべてこの制度が適用できるわけではありません。まだまだ条件があります。上記に該当する土地であれば、もしものときのためにちゃんと調べておく必要アリです。
参考:国税庁HP
どんな点が改正される予定なのか?
まず、現状の制度はどうなっているのか?
2つのケースで説明します。
(ケース1)
70代のお父さんが住んでいる自宅(土地も建物もお父さんの所有)があったとします。そして、40代の息子は息子自身で自宅用に土地と建物を購入し、別に住んでいたとします。
そこで、お父さんがお亡くなりになった場合、40代の息子は小規模宅地等の特例を受けられるか?
→答えは受けられません。実は息子が自宅を所有している場合は、この小規模宅地等の特例は受けられません。
(ケース2)
70代のお父さんが住んでいる自宅(土地も建物もお父さんの所有)があったとします。40代の息子は転勤族でずっと賃貸住まい、持ち家がありません。
そこで、70代のお父さんがお亡くなりになった場合、40代の息子は小規模宅地等の特例を受けられるか?
→答えは受けることができます。この息子がお父さんの亡くなる前の3年間、持ち家に住んだことがなければ、小規模宅地等の特例が受けられます。
このように息子の居住状況次第で、適用か不適用が変わります。
つまり、土地を相続する子が自分やその配偶者の持ち家に住んでいる場合、又は、親が亡くなる前の3年間のうちに、土地を相続する子が自分やその配偶者の持ち家に住んでいたことがある場合、親が住んでいる土地について小規模宅地等の特例を使うことができません。
これを利用するケースが増えてきたことで改正が入るようです。
例えば、どんなケースか?
ケース1の場合で、40代の息子が自宅の建物を20代の子供に贈与又は売却して自分は持ち家を持たない状況を作り出します。
そして、その状況で3年以上過ごします。その段階で、お父さんがお亡くなりになると、土地の80%減額が受けることができ、相続税が少なくて済むのです。
このような方法での節税が増えてきたことにより、平成30年度の税制改正で、住んでいる家がもともとは自分の家だったり、3親等内の親族が所有する家に住んでいたりする場合は、小規模宅地等の特例が適用できない、とするようです。
まとめ
いつから適用されるのか等、正式なことは平成30年の春ごろまで確定しませんが、恐らく改正されるでしょう。
法律は、後から現状に応じて変わっていきます。将来のリスク等もよく考えたうえで節税対策が必要です。