大阪で開業する女性税理士です。

経営者が保険に入る際に考えることは、資金繰りと保険に入る目的です。

2020/01/27
 
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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

2019年6月28日付で企業向けの節税保険について、通達(厳密にいうと法律じゃないけど法律みたいなもの)が改正されました。

法人の節税保険は、以前から保険の損金算入について国税庁が個別通達を出し規制をかけてきましたが、規制の都度、新たな保険商品が開発され「いたちごっこ」になっていました。

経営者は「節税」という言葉が好きな方が多いのですが(合法であれば、それ自体は別にいいんですが)、節税保険に加入する前にしっかり頭の整理をしましょう。

そもそも節税保険って?

節税保険とは、保険料を支払い経費に計上することで法人の利益を圧縮して節税効果を狙う定期保険などを言います。

この保険は解約返戻金が多額になることが多く、解約返戻率が高いときに保険を解約し返戻金を受け取ると同時に経営者へ解約返戻金とほぼ同額の退職金を支払うことでその利益を圧縮できるというのが、保険会社のセールストークになっています。

ただ、それほど節税にもならないんですよ。

貯金と保険で考えてみましょう。

貯金と保険の違い

将来、経営者の勇退時に支払う退職金を備える目的で、貯金をするか、または、保険で備えるかで会計処理の方法が変わります。

銀行で毎月定期積立をしても、積立に回したお金は経費として計上できません。また、この定期積立を解約しても利息以外は雑収入として収益計上する必要がありません。

これは、皆さんお分かりですよね。

一方、保険の場合は、その保険の内容次第では支払った保険料は経費として計上できます。そして、その保険を解約して返戻金があった場合、その返戻金は雑収入として収益計上します。支払ったときに経費になるものは、返金(収入)になったときに収益になります。

保険の場合は、支払ったときには経費に計上でき利益が少なくなり、その分納める税金が少なくなるため、得した気分になりますね。けど、上述したように解約返戻金が戻ってきたときは、収益計上します。

予定通り退職金を支払うことになったら、解約返戻金と退職金を相殺するから、いいんじゃないか?と思われるかもしれません。退職金と解約返戻金が相殺されれば、課税されるのはいつも通り本業で得た利益ですから。

ただ、、、もし解約返戻金ではなく定期積立していたお金で退職金を支払ったら?⇒退職金全額が本業から得た利益から減るので、その期はいつもより税金が安くなります。

つまり、保険の方は保険料を支払うごとに毎年少しずつ税金を少なくしてくれるだけです。

法人税の税率が現在より下がったり、会社の業績が現在より下向きになっていたら、保険の方が結果的に節税になるかもしれませんが(利益に応じて段階的に税率が高くなるので)。将来の税率や将来の業績は先のことなのでどうなるか分かりませんね。

今回の改正について

改正の内容

今回の改正では、医療保険やがん保険について個別で取り扱いが決まってたのが、医療保険やがん保険などの第三分野保険と定期保険に対し同じ通達を適用するようになりました。

解約返戻率ごとに処理方法が異なります。以下は、契約者が法人、被保険者が役員または使用人の保険契約(定期保険又は第三分野保険)について記載しています。

適用時期

今回の改正は2019年7月8日以後の契約に係る定期保険又は第三分野保険の保険料について適用され、今までの契約について遡って適用されることはありません。

保険加入のポイントは資金繰りと目的

資金繰り

保険に加入すると、定期的に保険料を支払うことになります。

毎月又は毎年決まった金額が引き落とされます。

資金的に余裕のある状態が永遠に続くのであればいいのですが、良い経営状態がずっと続くと考えるのは希望的観測。。。先のことは分からないのです。

資金が足りなくなって、意図しない時期に保険を解約⇒大きく元本割れし、会社は損する⇒保険会社は儲かる

ということにもなりかねません。

多少厳しい経営状態になっても支払える、と思えなければ、考え直した方が良いかもしれません。

保険の目的

保険は本来、万が一の場合に備えて加入するものです。

経営者が事故または重い病気になって万が一のことがあったら、家族・会社の従業員が困るけど、家族や従業員を守るだけの資産がないから、保険に入るんですよね。

その必要性を超えてまで保険に入っても、あまり意味がありません。

保険に入る必要性をしっかりプランニングしましょう。

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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

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