大阪で開業する女性税理士です。

外国人技能実習生の税金についての記事は、以前の制度を基に書いてるモノも多いですよ。

2020/04/02
 
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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

最近は、中小企業でも外国人技能実習生が増えていますね。

外国人技能実習生の数は2018年6月末現在、日本全国で28万5776人とのこと。

企業は、雇用した外国人技能実習生へ給料を支払う際に税金を天引きする必要があります。

制度上、何がどうなっているのか、整理してみました。



まずは居住者か?非居住者か?

日本の税法を適用するにあたって、重要なのはその人が「居住者か?」「非居住者か?」ということです。

「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人と規定されていて、「非居住者」とは、居住者以外の個人となっています(所得税法第2条第1項第3号、第5号)。

要は、居住者に当てはまらなかったら、みんな非居住者だ!ということです。

で、外国から来た技能実習生が入国直後から居住者になるためには、「住所」が日本にあると認められないとダメ。

「住所」があると認められる場合として、「国内に居住することとなった個人が、国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、その者は、国内に住所を有する者と推定する」と規定されています(所得税法施行令第14条第1項第1号)。

また、所得税法基本通達3-3では、国内において職業に従事するため国内に居住することとなった者は、その地における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、令第14条第1項第1号の規定に該当するとなっています。

そのため、外国人技能実習生が実習計画において、予め1年以上雇用されることが確定している場合は、上記に該当して、「居住者」となります。

もし実習計画において1年未満の雇用期間であれば、「非居住者」になります。

知っている限りでは、実習計画は2-3年の予定であることが多いので、来日当初からほとんどの人が居住者なんですかね。

以前の技能実習制度の下では、最初の1年は非居住者と判断されたようです。以前の技能実習制度では、最初の1年は研修期間であり雇用契約がなかったのです。2010年ごろに制度が変わり、現在は最初の2か月間は講習期間で雇用契約がありませんが、来日後3か月目からは雇用契約を結びます。なので、現在は1年以上の見込みで来日した場合は居住者となります。

参考:国税不服審判所裁決事例

上記の裁決を参考にしているのか、技能実習生は最初の1年は非居住者に該当するというネット上の記事が結構あります(上記の裁決時は以前の技能実習制度で現在の制度とは異なるため、税金においても取り扱いが異なります。)。

古い日付の記事なら分かるのですが、最近の日付であっても非居住者と記載されてたりします。。。まぁ、裁決事例をきちんと読む人又は読める人は専門家以外では少ないでしょうね。

居住者に該当すれば、租税条約がある場合を除き、日本人の従業員と同様に源泉所得税を天引きし、12月ごろに年末調整を行います。

非居住者であれば、20.42%の税率で源泉所得税を計算して徴収します。

 

租税条約が結ばれているか確認

基本的な取り扱いとしては、上記のとおりですが、国ごとに租税条約が結ばれていることがあります。

現在、日本はいろんな国と74条約を締結しています(参考:財務省)。

租税条約が結ばれている場合、日本の国内法ではなく、租税条約が優先されます。

中国の場合、技能実習生が日本企業から受け取る給与は租税条約上、非課税となり、租税条約に関する届出を提出することにより税金が免除されます。これは、居住者or非居住者は関係ありません。

ベトナムの場合、技能実習生が日本企業から受け取る給与は租税条約上も課税であり、居住者に該当すれば、日本人と同様に源泉所得税を計算し年末調整をします。

フィリピンは租税条約上、所得制限があるようです。

また、カンボジアの場合、現状では租税条約が結ばれていません。なので、カンボジア人は居住者に該当すれば、日本人と同様に源泉所得税を計算し年末調整をします。

国によって取り扱いが変わるため、初めての国から技能実習生を受け入れる際は、租税条約を確認する必要がありますね。

なお、租税条約は外務省や国税庁のHPなどネット上には掲載されていません。現状は租税条約関係法規集で確認することになります。

 

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