大阪で開業する女性税理士です。

居住用賃貸マンションを購入して消費税還付はできなくなる!—令和2年度税制改正

2020/01/27
 
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上場企業等で経理の仕事を経験し、その後、税理士業界へ転職。実務経験を約10年積んだ後、独立開業。

2019年12月12日に令和2年度税制改正大綱が発表されました。

その中で、「1000万円以上の居住用賃貸建物の課税仕入れについては、仕入税額控除を認めない。」というモノがあります。

つまり、居住用の賃貸物件を取得しても消費税還付は受けさせません!ということです。

これまでも多額の消費税還付につながるモノについては、度々改正が行われてきました。

これまでの改正と共にまとめました。



これまでの改正

消費税の納付額は、次のように計算します。

★預かった消費税(売上に係る消費税)-仮に支払った消費税(仕入などに係る消費税)

※詳しくはこちら

この消費税の計算をする際に、消費税が非課税の売上と消費税が課税の売上がある場合、仮に支払った消費税のうち、消費税が課税の売上に対応する部分だけを控除し、非課税の売上に対応する部分は控除できないことがあります。

居住用の賃貸物件については、消費税が非課税となっており、家賃収入に消費税が含まれません。そのため、オーナーの収入が居住用の賃貸物件のみであれば、購入した居住用賃貸建物に掛かっている消費税は控除できません。

しかし、賃貸建物に掛かる消費税は多額であるため、なんとかして消費税の還付を受けようと、検討するケースがありました。

例えば、自販機を設置するなど、消費税の掛かる売上を意図的に発生させ、居住用賃貸の非課税売上は翌年以降に発生させるように調整して、賃貸建物の消費税の還付を受けるという方法が流行りました。

こういった方法に対抗するため、様々な改正が行われてきました。

調整対象固定資産についての改正や平成28年度の改正で出来た高額特定資産の制度により、非課税の賃貸物件取得で消費税の還付を受けるというハードルは随分上がったのです。

調整対象固定資産

調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で税抜金額が100万円以上のものをいいます。

調整対象固定資産を取得した場合のポイントは2つ。

1.比例配分法で消費税の計算を行った場合

調整対象固定資産を取得してから3年後に課税売上割合が一定率以上変動した場合、調整対象固定資産について以前に控除した仮払消費税を国へ返還したり、また逆に以前に控除できていなかった仮払消費税を控除するという調整を行うことになっています。

※売上全体のうち課税の売上が占める割合を課税売上割合といいます。

2.以下の場合の当初2年間で、調整対象固定資産を取得後3年間は、免税事業者になれず、簡易課税も選択できない。

  • 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合
  • 資本金1,000万円以上の法人を設立した場合

高額特定資産

高額特定資産とは、税抜金額が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。

高額特定資産を取得した場合には、取得後3年間は消費税の免税事業者になれず、簡易課税を選択することができません。

なお、消費税が免税であったり、簡易課税の適用を受けている期間に高額特定資産を購入した場合は関係ありません(そんなケースはないかと思いますが)。

 

居住用賃貸建物の仕入税額控除ができなくなるのは、いつから?

令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物を取得した場合に適用されます。

但し、令和2年3月末までに契約をしていれば、令和2年10月1日以後に取得した場合でも適用除外です。

 

全ての居住用賃貸建物が該当する訳ではない

「居住用賃貸建物について仕入税額控除」ができなくなるという改正ですが、以下については、この改正が適用されないと思われます。

  • 居住用賃貸建物と共に取得する駐車場などの施設に係る部分
  • 税抜で1千万円未満の居住用賃貸建物(高額特定資産に該当しないもの)⇒調整対象固定資産の調整計算の可能性あり
  • 社宅として取得し、無償で従業員を居住させる場合

 

最後に

大綱ですので、まだ法律として成立した訳ではありません。

ただ、この大綱が国会に提出され、来年3月末までにはこのまま成立することが多いため、不動産投資をしている人にとっては頭に入れておきたい情報ですね。

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